思索への遊歩道
今回は京都・左京区にある「哲学の道」の紹介です。哲学の道は、琵琶湖疎水分線に沿うようにして銀閣寺道から若王子までに散策路を巡らせた、2kmほどの小径です。バス停留所「銀閣寺道」から、哲学の道を通って銀閣に向かう散策ルートをご提案します。
哲学の道・関雪桜
著書『禅の研究』や独自の哲学を確立したことで有名な西田幾多郎が、毎朝思索に耽りながらこの道を歩いていたというエピソードにちなんでこの名が付けられました。道中には西田幾多郎の詠んだ和歌の石碑も建てられています。
春には美しい桜のトンネルを見せるこの並木道ですが、その桜並木は「関雪桜」と呼ばれています。銀閣寺畔に居宅を構えていた橋本関雪という日本画家が、苦悩の時代を支えてくれた京都への恩返しとして桜並木を寄贈したことに由来します。哲学の道沿いには「白沙村荘 橋本関雪記念館」という美術館があり、関雪の作品や大画室、池泉回遊式の庭園を見ることができます。
京都人が愛する散歩道、そして桜並木。イヤホンを外して、スマホをポケットにしまって、あなたを取り巻くたくさんのアイデアに思いを馳せながら歩いてみてください。
GOSPEL
バスを降り、哲学の道を通って銀閣に向かう途中でひとつ横道にそれると、「GOSPEL」というカフェに出会うことができます。ヴォーリズ建築の流れをくむクラシカルな洋館で、アンティーク家具に囲まれてお食事をいただける広々としたカフェです。ヴォーリズ建築と言えば滋賀・近江八幡にその多くが残されていますが、京都では東華菜館本店などが例に挙げられます。
扉を開けて二階に上がると、ホールのように天井が高く、明るすぎない店内に差し込む光は床に反射し、どことなくファンタジックな空気を纏っています。テーブルや椅子、ソファはの高さは様々で、座る席によって違った味わいがあり、「また別の席を選ぶために訪れたい」とすら思わせます。店内はそのファンタジックな空気の通りとても静かで、まさに思索に耽る散歩の道中にぴったり。光は取り込みつつも明るすぎない、華やかな装飾はあれど賑やかすぎない。どこかに腰を下ろして、あなたの哲学に思いを巡らせたい時にはぜひとも訪れてほしい空間です。
おすすめのメニューはスコーンセットです。ほろほろと崩れんばかりに柔らかく焼き上げられたスコーンに、クリームとブルーベリージャムが添えられています。
慈照寺・銀閣


銀閣寺という名前で有名ですが、正式名称を東山慈照寺といいます。「銀閣」と呼ばれる観音殿や本堂、庭園など、わびさびを重んじる東山文化を、随所に感じることができる美しさがあります。
境内に入ると、まずは正面から観音殿を見ることができます。銀閣寺が銀色でないことはもはや有名ですが、実際に見てみると派手さがないのにも関わらず荘厳な雰囲気を纏っていることが分かります。順路にならって歩いていくと、庭園を眺めつつ、山の斜面に沿って階段を上ることになります。上った先では、木々の間から観音殿の二階部分を見下ろすことができ、さらにもう少し上った先では京都の街並みと共に観音殿を見下ろすことができます。下り坂の途中では最初に観音殿を見た角度の反対側から、順路の最後には屋根の上の鳳凰がよく見える位置から眺めることができるなど、銀閣を沢山の角度から、魅力を余すことなく見て回ることができる造りになっています。
庭園には様々な木や苔、石が散りばめられていますが、ぜひ、その一つひとつに注目してみてください。一見ただ一面に苔が広がっているだけのように見えますが、近づいて見てみるとその長さや色合い、形などが様々であることが分かります。その種類はなんと100を超えているのだとか。明るい黄緑の苔、深い緑の苔、まるで葉のようにふさふさとした苔など、無数の苔が折り重なって美しい緑の絨毯を広げているのです。今の時代、直接足を運ばずともSNSなどで美しい写真を簡単に見ることができます。ですが、写真で見るだけでは分からない、実際に足を運んでこそ感じられる「侘び寂び」こそ、観光の醍醐味なのではないでしょうか。そして、その「侘び寂び」は、あなたなりの哲学を思索するこの散歩に少なからず新たな風を吹かせてくれることと思います。
ライターのおすすめポイント
境内に入って少し進むと、「向月台」と「銀沙灘」と呼ばれる盛り砂があります。もちろん近くで見ても迫力や奥行きが素晴らしく、慈照寺・銀閣の荘厳さを際立たせていることを感じ取ることができますが、私の印象に残ったのは坂を上った先からの眺めです。山に沿って階段や坂を上ると観音殿などを見下ろすことができるのですが、そこから見る「向月台」と「銀沙灘」は光と影がより一層際立ち、コントラストがはっきりして見える印象でした。見る場所によって印象が変わるのも、何百年も愛され続けてきた東山文化ならではの面白さだと思います!
nimo
カフェや建築をよく巡っています☕︎
